ソニーグループにおける生成AI・エージェンティックAI戦略
〜AI民主化から組織変革まで:45,000人規模の実践例〜
講演者
大場氏(グループガバナンス統括)
平野氏(シニアアーキテクト)
講演概要
ソニーグループが推進する生成AI・エージェンティックAI戦略について、戦略面と技術面の両方から包括的に紹介された講演です。 グループ全体45,000人が利用する大規模AI活用基盤の構築実績と、「人を中心に据えたAI活用」という明確な哲学に基づいた組織変革への取り組みが語られました。
大規模AI活用の実績
45,000人
グループ全社員が利用
200万回/月
AI推論実行回数
5万時間/月
生産性向上効果
POC実績
実行済POC件数260件
本番移行済40件
利用可能モデル130種類
グループ展開
対象グループ会社200社以上
展開地域全世界
1日平均利用12万回以上
ソニーグループのAI哲学:人中心のアプローチ
基本理念
「クリエイティビティは人に宿るもの、
AIはクリエイティブをサポートするもの」
創造性向上
クリエイターの創造力を最大化
生産性向上
社員の業務効率を大幅改善
感動創造
世界を感動で満たすパーパス実現
Strands Agents SDK:エージェント開発の革新
🚀 開発効率の劇的改善
従来開発との比較
- • コード量:70-80%削減
- • メンテナンス性:大幅向上
- • 拡張性:柔軟な機能追加
- • 再利用性:コンポーネント共有
ソニーでの実践成果
- • 既存プログラム移行完了
- • 技術標準化の推進
- • 開発速度の向上
- • 品質保証の向上
エージェント開発4領域での評価
MModel(モデル推論)
✅ 現在の利点
- • モデル間設定差異の吸収
- • Converse APIとの連携
- • 推論設定の簡便化
🔮 今後への期待
- • 細かい調整機能の拡充
- • Bedrock以外のモデル対応
- • マルチLLM環境の管理負荷軽減
RReasoning Loop(推論ループ)
✅ 現在の利点
- • リーズニングループ実装の標準化
- • 複雑タスク実行への対応
- • ReActパターンの自動実行
🔮 今後への期待
- • ループ途中でのカスタム処理挿入
- • より柔軟な制御機能
- • 個別拡張への対応
OAI Orchestration(AIオーケストレーション)
✅ 現在の利点
- • メモリ設計の標準化
- • 複雑な状態管理の簡素化
- • エージェント間連携の基盤
🔮 今後への期待
- • マルチエージェント状態管理
- • 相互関係の複雑化対応
- • より高度な協調機能
TTool Use(ツール利用)
✅ 現在の利点
- • MCP・A2A概念が組み込み済み
- • 機能拡張が簡便
- • エンタープライズツール連携
🔮 今後への期待
- • マルチIDP認証対応
- • 認証認可情報の引き渡し
- • エンタープライズセキュリティ強化
マルチプラットフォーム・エージェント連携の実現
実際の連携フロー例
1
Microsoft Teams UI
ユーザーがTeams UIからクエリを入力
2
エージェンティックAIプラットフォーム
最適なエージェントを自動選択・ルーティング
3
並列エージェント処理
Copilot Studio + Bedrock構築エージェントが同時動作
4
データ統合・返答
各リポジトリからのデータを統合してユーザーに返却
技術的実装要素
- • MCPサーバー社内標準化
エージェント間通信の統一プロトコル - • A2A連携機能
エージェント同士の自律的協調 - • マルチプラットフォーム対応
異なる環境の透明な連携
実現される価値
- • プラットフォーム垣根の排除
統一UXでの多様なエージェント活用 - • 複雑タスクの自動実行
人手不要の高度業務処理 - • コスト最適化
最適エージェント選択による効率化
AIドリブンカンパニーへの組織変革
AIアクセラレーションチーム設立
体制
- • CDO小寺氏直轄
- • 技術部門総力結集
- • 専門チーム組成
推進機能
- • AI民主化推進
- • AI組織変革
- • エージェンティックAI構築
ガバナンス
- • セキュリティ連携
- • コンプライアンス
- • AI倫理・プライバシー
短期戦略
- • 個人レベルでのAI活用促進
- • 組織業務へのAI適用加速
- • 民主化プラットフォーム拡充
- • エージェンティックAI導入
中長期戦略
- • AI当たり前時代の組織設計
- • 人事戦略とAI戦略の連動
- • 新しいリソース戦略検討
- • 競争力向上への変革
組織のAI活用戦略への応用ポイント
大規模組織でのAI導入モデル
1. 民主化
全社員へのAI教育
2. 実践
POC・パイロット実行
3. スケール
全社展開・標準化
4. 変革
組織・戦略転換
技術選択の戦略的視点
- • 軍用割時代の認識
技術選択の柔軟性重視 - • ピボット戦略
機動力と経済性の両立 - • 標準化推進
エンタープライズ要件対応
組織変革の実践アプローチ
- • 人中心哲学
価値観・目的の事前明確化 - • 全社巻き込み
トップダウン×ボトムアップ - • 継続学習
技術進化対応の組織能力
Strands Agents導入検討のポイント
導入メリット
- 開発効率化: 70-80%のコード削減効果
- 技術標準化: モデル・プラットフォーム差異吸収
- エンタープライズ対応: セキュリティ・認証基盤
- 将来性: AWS生態系での継続機能拡張
検討課題
- カスタム処理: 特定業務要件への対応可能性
- マルチクラウド: AWS以外環境との統合方針
- 人材育成: 新技術習得・体制整備
- 移行戦略: 既存システムからの段階移行
実践的導入アプローチ
1
PoC段階
小規模エージェントでの機能検証
2
パイロット運用
限定業務での本格活用
3
段階展開
成功事例ベース適用拡大
4
全社展開
標準プラットフォーム確立
まとめ:企業AI活用の新しいスタンダード
ソニーグループが示すAI活用の成功要因
明確な哲学
人中心のAI活用理念に基づく一貫した戦略
大規模実践
45,000人規模での実際の業務適用と継続改善
技術革新
Strands Agents等最新技術の積極活用
「技術の進歩に合わせて柔軟にピボットを取る戦略こそが、
AI時代の企業競争力の源泉である」